視覚障害者支援パソコンボランティア入門テキスト 著作:ゆうあいネットPCVOL 原 広三                      作成:2007年9月16日(改訂)                         【ご注意】 ・本テキストはWindowsXP、PC-TalkerXP、Internet Explorer Ver.6.0という環境で説明しています。 ・本テキストと併せて、視覚障害者対象IT講習会テキストをご利用ください。(ゆうあいネットPCVOLのホームページから入手可) 【目次】 1 視覚障害者にとってのパソコン 2 視覚障害者はどのようにしてパソコンを操作するか 3 視覚障害者用のソフトウェア 4 視覚障害者へのパソコン指導の基本 5 視覚障害者のためのパソコンの環境設定 6 基本的なキーボード操作 7 サポートする上でのポイント 【本文】 1 視覚障害者にとってのパソコン  視覚障害者、特に全盲の人たちにとってパソコンは非常に便利な道具である。昔の視覚障害者には不可能であった墨字(普通文字)を書いたり読んだりすることもパソコンを使えば簡単にできる。  しかし、視覚障害者にとってパソコンの操作を覚えることは大変難しい。Windowsは晴眼者にとっては大変使いやすいOSであるが、視覚障害者には複数のWindowが開く画面構成は複雑であり、音声だけでは理解が困難である。 2 視覚障害者はどのようにしてパソコンを操作するか ・全盲…スクリーンリーダーを利用してキーボードで操作する。 ・弱視…画面の設定で見やすい文字の大きさにしてマウスで操作する。弱視であっても視力の程度によってはスクリーンリーダーも補助的に使用する。 3 視覚障害者用のソフトウェア (1)Windows画面音声化ソフト(スクリーンリーダー)  画面の見えない全盲の視覚障害者にとっては絶対に必要なソフトである。 (2)Windows画面拡大ソフト  弱視者に必要なソフトで、Windowsの画面を2〜16倍に拡大表示する。しかし、ほとんどの弱視者の場合、Windowsの「画面のプロパティ」で文字の大きさを「特大のフォント」に設定したりWindows付属の拡大鏡を使用したりすれば操作に不自由はないので、このソフトを必要とするのは、強度の弱視者に限られる。   なお、弱視の人の見えにくさにはいろいろある。文字をかなり拡大しないと見えない人、少しの拡大で見える人、視力はよいが視野が極端に狭い人(拡大するとかえって見えにくい)など見え方は様々なので、一人ひとりに見え方を確認して文字の大きさや色合いなどを個別に設定する必要がある。 (3)6点入力ソフト  全盲者にとってフルキー入力をマスターすることは、キー位置の確認ができる晴眼者と比べると困難である。若い人ならともかくIT講習会に参加するような高齢者にはなおさら難しい。6点入力ソフトは、そういう苦労を軽減してくれるソフトである。つまり、点字タイプライターを使うように6つのキー(FDS-JKL)だけで入力する方式である。6点入力ソフトは単独の製品としては発売されておらず、前述のスクリーンリーダーのPC-TALKERに付属しているKTOS(ケートス)などがある。ただし、パソコンの機種によっては6点入力を受け付けないものがあるので購入時に注意しなければならない。 (4)エディタ  視覚障害者用に開発されたテキストエディタでよく使用されているものとしてはMyedit(マイエディット)がある。MyeditはPC-TALKERに付属しているソフトで、文字の拡大表示や簡単なキー操作など視覚障害者が使いやすいように設計されている。スクリーンリーダーを使えばワードや一太郎などの一般的なワープロソフトを視覚障害者が使うことも可能であるが、初心者には難しい面がある。 (5)メールソフト  視覚障害者用に開発されたメールソフトでよく使われているのは、マイメール(高知システム開発)とMMメール2(宮崎嘉明氏・音声対応版 6,800円)である。これも前述のマイエディットと同様に、視覚障害者が使いやすいように設計されたソフトである。一般的によく使われているアウトルック・エクスプレス等のメールソフトは音声化ソフトが十分に対応しておらず、視覚障害者が使用するのはかなり困難である。 4 視覚障害者へのパソコン指導の基本  晴眼者であってもパソコン初心者にとって初めて触るパソコンへの抵抗感は強いものがある。まして画面やキーボードの文字が見えにくい視覚障害者にとってはパソコンを操作する上で大きな障害がある。このことを十分に理解した上で、視覚障害者のパソコン利用を支援しなければならない。  しかし、視覚障害者がパソコンを操作するのが難しいからといって、安易に手伝ってしまうのはよくない。それでは視覚障害者が自力でパソコンを操作できるようにはならない。  また、あまり教えすぎることもよくない。晴眼者が見えているようには視覚障害者には画面の様子が見えていないので、たくさんのことを教えても消化不良を起こしてしまう。必要最小限の基本的な操作が理解できるようにゆったりとしたペースで指導したい。  全盲者は画面が見えないので、スクリーンリーダーの音声だけを頼りに、マウスは使わずキーボードで操作する。晴眼者は基本的にマウスでWindowsを操作するが、Windowsの操作はすべてキーボードでもできるようになっている。支援者もこのキーボードによる操作に精通しなければならない。  弱視者の場合は画面の表示を拡大すれば晴眼者と同じようにパソコンを操作することができるので、見やすい画面にする方法を指導する。ただし、マウスポインタの動きを目で追うことは難しい場合には、キーボード操作を基本にするのが望ましい。  視覚障害者へのパソコン指導の基本について3つのポイントを述べる。  第1のポイントは、必ず自分でキーボードを使って操作してもらうことである。支援者は親切心からマウスを使って手助けしがちであるが、それでは視覚障害者のパソコン技能習得の妨げとなってしまう。援助者はキーボードによる操作手順を、キーの位置を具体的に説明(左下3番目のキーというように)し、視覚障害者自身にパソコンの操作をしてもらうことが大切である。   第2のポイントは、音声ガイドをきちんと聞いて操作してもらうということである。援助者はこれも親切心から横からいろいろと口出しをしたくなるが、それは視覚障害者自身が音声ガイドを聞くことを妨げることになる。   第3のポイントは、Windowsの概念をよく理解してもらうということである。ただひとつのソフトが使えるようにすればよいのではなく、新しいソフトに対しても応用がきくように、概念(画面構成)をしっかりと理解してもらうことが大切である。そのためには、最初のうちはショートカットキーを使わず、メニューの内容を一通り確認してもらって、メニュー構成を理解してもらうことである。Windowsソフトは、どのソフトでもメニューは「ファイル、編集…」という具合に大体その構成は共通性がある。これを理解してもらえば、新しいソフトを使う場合にも応用ができる。   このようにWindowsの主な操作がメニュー方式になっていることについては十分に理解してもらう必要がある。特に、Windowsキーで開くスタートメニューやアプリケーションソフトを立ち上げた時のプルダウンメニューを開くALT(オルト)キーについて時間をかけて指導すべきである。ALTキーで開くプルダウンメニューの中に,立ち上がっているソフトのすべてのコマンドがあるので、このプルダウンメニュー間の移動法を指導することが重要である。メニューは階層構造になっていることも具体的な操作を通して理解してもらうようにする。   また、メニューのいろいろなソフトやフォルダを開くと、それは開いたままでウインドウが重なったような状態になっていることも理解してもらう必要がある。それらは終了しているのではなく、オルトキーとタブキーでアクティブウインドウ(使える状態になったウインドウ)を切り替えられることを理解してもらい、この機能を有効に活用してもらうようにすることが重要である。   IT講習会の主体は受講者であるという認識を持って、支援者はあくまでも受講者の援助に徹しなければならない。そして、受講者自身が主体的に音声ガイドを頼りにキーボードで操作できるように留意したい。 5 視覚障害者のためのパソコンの環境設定 (1)Windowsの画面設定  弱視者が見やすいように、また全盲者が音声化ソフトで操作しやすいように画面の設定を変更する。 @画面の表示(弱視用)  スタートボタン→設定→コントロールパネル→「デスクトップの表示とテーマ」   →「画面」を開く。 テーマ…テーマ「Windowsクラシック」 デスクトップ…背景「なし」 デザイン…ウインドウとボタン「Windowsクラシックスタイル」      配色「ハイコントラスト黒」      フォントサイズ「特大」      効果ボタンをクリックし、「大きいアイコンを使用する」に設定し、     OKをクリックする。 Aマウスポインタの表示(弱視用)  同じく「デスクトップの表示とテーマ」で「マウスポインタ」を開く。  ポインタのデザインを「拡大ポインタ」に設定する。 Bスタートメニューの表示(全盲用)  同じく「デスクトップの表示とテーマ」で「タスクバーとスタートメニュー」を開く。  スタートメニューを「クラシックスタートメニュー」に設定する。 Cフォルダ・ファイルの表示(全盲用)  マイドキュメントあるいはマイコンピュータを開く。 「表示」メニューを開き、「一覧」に設定する。(これを必ず最初に行う。弱視には「アイコン」がよい。) 「ツール」メニューを開き、「フォルダオプション」で次のように設定する。  全般→作業…「従来のWindowsフォルダを使う」  表示→詳細設定…「登録されている拡張子は表示しない」のチェックをはずし、         「適用」ボタンをクリックする。    フォルダの表示…「すべてのフォルダに適用」をクリックする。 (2)インターネットエクスプローラの設定 @画面の設定 ホームページの文字や色合いは弱視者にとって読みにくい。そこで、読みやすい文字の大きさと色合いに設定する。 「表示」→「文字のサイズ」を最大にする。 「ツール」→「インターネットオプション」で次のように設定する。  ・「色」をクリックし、文字列を白色に、背景を黒色にする。   リンクの表示済みを白色に、未表示も白色にする。    「ポイント時に色を変更する」にチェックを入れ、ポイント時の色を黄色にする。  ・「ユーザ補助」をクリックし、書式設定の3つの項目すべてにチェックを入れる。   これによりすべてのホームページが自分で設定した文字と色合いで表示される。 Aスタートページの設定  晴眼者は一般的にYahooやgooなどの検索エンジンを使用しているが、音声化して操作する全盲者には、不必要な情報が多くて非常に使いにくい。その点で、シンプルな画面構成となっているGoogle(グーグル)は、視覚障害者に使いやすい検索エンジンである。そこで、このGoogleをブラウザ(IE)のスタートページに設定するのがよい。この設定はインターネットエクスプローラの「ツール」→「インターネットオプション」のホームページ設定で行う。 (3)スタートメニューへの登録   全盲者は、晴眼者がするようにデスクトップのアイコンをダブルクリックしてアプリケーションソフトを起動することはできない。スタートメニューを開き、さらにプログラムメニューを開き、その中から目的のアプリケーションソフトを探さなければならない。マウスですれば簡単だが、一つずつ音声を聞きながら順番にメニューを探していくとかなり時間がかかる。そこで、よく使うアプリケーションソフトは最初に開くスタートメニューのトップメニューに登録しておけば、操作が簡単ですむ。   スタートメニューへの登録方法は次のとおりである。スタートメニューに登録したいソフトのアイコン(プログラムメニューやデスクトップにあるもの)をクリックしたままスタートメニューのところまでドラッグし、目的の位置で停止してボタンから指を離せばよい。これでスタートメニューに新しいメニューが追加される。 6 基本的なキーボード操作 (1)全般的な操作 Windowsキー(Windowsのロゴマークのあるキー)…スタートメニューを開く 矢印(上下左右)キー メニューの中の項目を移動する。選択項目を移動する。 Enter(エンター)キー プログラムの起動、変換文字の確定、操作の実行、選択の決定、改行する。 Alt(オルト)キー  アプリケーションのメニューを開く。 Esc(エスケープ)キー  ひとつ前のメニューに戻る。操作をキャンセルする。 「半角/全角」キー  日本語変換のオン/オフの切り替え シフトキーと「変換」キー(スペースキーの右のキー) 6点入力とフルキー入力の切り替え(KTOS起動時) Alt+F4  アプリケーションの終了 Tab(タブ)キー  ボタンや入力枠の移動 (Shift+Tabで前に戻る) Space(スペース)キー  チェックボックスのオン/オフ、漢字の変換 Alt+Tabキー  アクティブウィンドウの切り替え(Altキーを押したままTabキーを押していき,目的のソフトを読み上げたらAltキーから指を離す。) Ctrl+Tab  タブ(小見出し)の切り替え (Ctrl+Shift+Tabで前に戻る)タブとは設定ウインドウなどでたくさんの項目ウインドウが重なったようにあるところの上にある、ファイルの見出しのようなもの。 Windowsキー+「D」  起動中のすべてのウインドウを最小化して、デスクトップをアクティブにする。(もう一度同じ操作をすれば,起動中のウインドウが最大化する。) Home(ホーム)キー  カーソルを行頭に移動する End(エンド)キー  カーソルを行末に移動する。 Ctrl+Homeキー  カーソルを文頭に移動する。 Ctrl+Endキー  カーソルを文末に移動する。 Ctrl+C コピー Ctrl+X 切り取り Ctrl+V 貼り付け Ctrl+A すべて選択 Ctrl+S ファイル保存 Ctrl+P 印刷 ※ショートカットキーは、メニューの項目の後ろに「コピー Ctrl+C」というように書いてある。ショートカットキーを使えば操作が簡単にできるが、最初のうちはメニューの構造の理解のためにメニューから選択した方がよい。慣れたところで、ショートカットキーを使うとよい。 (2)PC-Talker独自のショートカット Ctrl+Alt+「A」  全文の読み上げ(一行読み上げは下矢印キー、一文字読み上げは右矢印キー) Ctrl+Alt+1  アクティブウインドウ名の読み上げ Ctrl+Alt+2  起動中のすべてのウインドウ名の読み上げ Ctrl+Alt+下矢印キー  画面情報の読み上げ(PCトーカーXPでは、Ctrl+Alt+「Z」または「.」) Ctrl+Alt+F11  音声ボリュームの調節 Ctrl+Alt+F 7  音声スピードの調節 Ctrl+Alt+F 2  音声の停止/再開 Ctrl+Alt+F 3  音声化ソフト(PC-Talker)の終了 Ctrl+Shift+F 3  音声化ソフト(PC-Talker)の再起動 (3)インターネット・エクスプローラでの操作 全文読み上げ シフトキー (全体をいっぺんに聴きたいときにはこれを使う。) 読み上げ停止 エスケープキー (ただし再びシフトキーを押すと最初から読み上げる) 区切りながら読み上げ コントロールキーと下矢印キー (ひとつ前の文章をもう一度聴きたいときにはコントロールキーと上矢印キーを押す。文章をゆっくり確認しながら聴きたいときにはこれを使う。) リンク項目の読み上げと移動 タブキー 前のリンク項目に戻る シフトキーを押したままタブキー リンク先のページを開く リンク項目(高い声)のところでエンターキー とばして読む コントロールキーを押したままページダウンキー とばして前に戻る コントロールキーを押したままページアップキー フレームの移動 コントロールキーを押したままタブキー 前のページに戻る オルトキーを押したまま左矢印キー 次のページに進む オルトキーを押したまま右矢印キー 最初のページに戻る オルトキーを押したままホームキー 7 サポートする上でのポイント (1)まず最初にすること  ・パソコン本体、ディスプレイ、キーボード、マウス、プリンタ、スピーカーなどを実際に手で触れて形や役割を確認してもらう。 (2)Windowsの概念 ・複数のWindowが同時に開いていること(アクティブウィンドウの概念)、メニューは階層構造になっていること、複数のアプリケーションが同時に起動して、それを切り替えることができることを視覚的なイメージとともに説明する。 (3)メニューの操作 ・スタートメニューの操作とメニューバー(ALTメニュー)の操作では矢印キーの使い方が少し違うので注意する。 ・最初はメニューで操作し、慣れてきたらショートカットキーも覚えていく。 (4)文字入力 ・入力方法は本人が最もスムーズに入力できる方法であれば何でもよい。ただし、フルキー入力よりは6点(点字)入力の方が最初から覚えるには簡単である。6点(点字)入力をするには、6点入力ソフト(KTOS)を起動させる。(KTOSを起動してからフルキーに戻すには、シフトキーとスペースキーの右のキーを押す。) (5)ファイル管理 ・ドライブ、フォルダ、ファイルは階層構造となっていること(大きな箱→小さな箱と入れ子のようになっていること)を説明する。 (6)メールソフト(MMメール、マイメール) ・メニューバーの構成が起動画面とメール作成画面とでは異なっていることに注意。(メニューが変わるというのは、音声ユーザーにとっては混乱するもとになる。) (7)Webページ閲覧 ・検索エンジンはGoogle(グーグル)を利用するのが便利である。(画面構成がシンプル) ・目的の情報に速くたどり着くには、複数のキーワードを入力して検索するとよい。 ・フレームページや広告ウインドウなどへの対応方法を説明する。 終わり 3